10代の頃、避けていたアーティスト(バンド、シンガー)のひとつがビートルズでした。だってさ、もう過去の人達だしさ、評価が出来上がっちゃってるしさ、今を聴こうぜ、評価は自分の耳でしようぜ!
なんて青臭いことを考えていたじめっと薄暗いパンク少年だった私は、20代半ばにしてはじめてその凄さを知ることになったわけですが。そんなわけで聴かず嫌いのアーティストというのはいまだに結構いるような気がするのです。
マイルスデイヴィス。という人もジャンルは違えど自分の中では評価が定まっていないアーティストでした。それでも何枚か持ってるし、スゲえっ、て思うこともあるけどさ。なんかね、来ないっていうかさ。巨匠だし。みたいな。
いや、でもね、つい先日その評価は変わりました。それも意外な曲で。それが「
TIME AFTER TIME」。まさかあの曲じゃないだろ、って思ったらそのまさかだったわけで、しかもバックの演奏はまったくヒネリが効いてなくてショッピングセンターで流れてくるようなまっとうさで。おいおい、って思いながら聴き進んだらガツンときてしまった。うかつにも。そのどこがどうすごいのか説明できる言葉を持ち合わせていないのがもどかしいのですが、アーティストが他人の曲を「解釈する」っていうのはこういうことかと。マイルスの演奏もバックバンドと同様にオリジナルのメロディーから大きく外れることはない。でも、その一音で、空間が構築されたとき、原曲とはまったく違う方向に向かっていることに気付かされて、まさにその瞬間「そこ」に連れて行かれてしまう。なんなんだろうね、この、えも言われぬ哀しみは。初めてだよ。ちょっと、言葉を、失う
そんなわけで、やっと私に近付いてくれたマイルスを、ちゃんと聴いちゃおうかな。そろそろ。